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トランペットは憧れの楽器である。
だが、高校時代に入った吹奏楽部では、吹くことができなかった。
トランペットへの思いがくすぶり続け、数十年後に、トランペットとの出会いが待っていた。
入部
振り返れば、４０数年前、高校の吹奏楽部へ入部。吹奏楽といえば、もれなく「トランペット」。カッコいい！ ただ、トランペット・パートは、既に新入部員がそろったらしく、連れて行かれたのは、トロンボーン・パート。デカいラッパ、だと思った。
吹奏楽やオーケストラにおいて、トロンボーンが、いかに重要であるかを先輩から語られ、なるほど、トロンボーンって、すごいんだな、なんて思った記憶が今、よみがえる。気が付けば、トロンボーンのマウスピースを吹き始めていた。
アンブシュア
音を出すための口の形。良い音を出したい。きれいな音を出したい。高い音を出したい…。そのために、いろいろ悩み、試行錯誤の繰り返し。
良いアンブシュアを作るためにはどうしたらよいのか、先輩に聴いたり、音楽本を読んだりしながら、試行錯誤していた。これだというものが、なかなか見つからなかった。挙句の果てに、チューニングB♭、が出なくなってしまったのであった。
挫折
その時の気持ちは、逃げ出した、というものだった。人生で初めて味わった「挫折」。苦く悔しく、脱力感、敗北感、虚無感、才能のない非力でちっぽけな存在であることを痛切に直面させてくれた体験であった。
出会い
とある縁から、とある市民吹奏楽団へ入団させていただいた。今から２０年以上前のことである。楽団のメンバーは、音大のトランペット奏者、トロンボーン奏者、吹奏楽コンクール全国大会や関東大会の常連校出身の管楽器奏者、小学校からの吹奏楽経験者などなど。その道の「プロ」たちの集団だと思った。
そんな人たちの演奏は、ものすごく素敵なものだった。綺麗で澄んだ音。どこまでも響き渡っていきそうな音量。揺れのないピッチと小気味よいリズム。全てが魅力的だった。本当に貴重な時間を与えていただいたと思う。そして、チューニングB♭ も出せないような自分を入団させてくださった代表と、受け容れてくださった団員の皆様に、今もなお深く感謝しています。
気付き
あれから何年経っただろうか。ふとしたきっかけで、トランペットを、もう一度手にした。２６年前に購入し、とある市民吹奏楽団で２３年前に吹いていたトランペット（YTR2320ES）は、今の実力相応の音を出してくれた。ビュービューという雑音とでもいうものだったが。
やっぱり、吹けるようになりたい、と思った。今度は、「北の国から」が、「ルパン三世のテーマ」が、「ウィスキーがお好きでしょ」…、が吹けるようになりたい、なりたかった。そう、具体的な、この曲が吹けるようになりたくなったのだ。
ただそれだけのこと
この曲が吹きたい。吹けるようになりたい。そう思ってから、ユーチューブを見まくった。あの頃には考えも及ばないほど、時代は変わったと思った。トランペットの吹き方に関する、たくさんの動画がアップされていて、気になったものは、片端から見まくった。そして、実際に吹いてみた。仕事が終わり、自宅に戻ってから、２０～３０分であるが、毎日、吹いた。
初めは、やっぱりFを出すのがやっとだった。それでも、今度は続けた。ダメでもともと、吹けなくたって、音が出なくたって、誰が損するわけでもなく、誰の迷惑になることでもなく、ただそれだけのこと、と思った。
変化
3～4ヶ月経った頃、チューニングB♭ が、以前より楽に出せるようになっていた。まったくもって吹けなかった「アメイジンググレイス」が、なんとなく吹けるようになっていた。途中まで。持久力がなく、バテてしまうのだ。それでも、前とは違う、との実感があった。少しはいけるようになった、と思った。明るい兆しと感じていた。
新たな出会い
「YTR2320ES」から「YTR850S」へ。新しい相棒になった。この相棒が、少しでも本来の実力を発揮できるように上達したいと思っている。いつかステージに立って演奏していることを思いながら。
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